二十億光年の孤独









この空は、こんなにも綺麗だっただろうか。



少しだけ視線を上げて見た夜空はちらちらと瞬く光でいっぱいだった。
この東京の空にもこんな星空はあったのだろうか。
不意にアメリカ大陸で見た夜空を思い出す。
あのときは、夏だった。
そして今は冬。そしてここは日本。


何もかもがあのときとは違う。
そう、何もかもが。









空気が、乾燥しているからだろうか。
淀んだ空気を一掃する、冷たい空気が流れているからだろうか。

冬は最も星が美しく見える季節の一つだと、いつか習った気がする。
太陽の残照もない冬の夜空は真っ暗で、大気の温度の変化が少なく、上空を流れる気流のために空気の汚れが洗われるからだとか。











風が鳴る。

冬の冷気が首元をかすめていった。思わず足を止めてマフラーを締め直す。
葉の落ちきった街路樹に人影はなく、どこか物寂しげにしんと静まりかえる。

明日も寒いんだろうな、と何とはなしに思う。
かじかむ指が頬に触れた。











―ああ、そうか。
















空がこんなに暗いのも、星があんなに明るいのも。

いつも傍で眩しいくらいに光っていたものが、見えなくなってしまったから。






















ちらちら輝く夜空をもう一度見上げる。

吐く息が白く変わって夜の冷たい闇に消えた。
肌を切りつけるかのようなしんとした空気が流れていく。








これから先、何度この星空を見上げるのだろう。
静寂が支配する夜に何度思い出すのだろう。
今日のこの日の星空を。そしていつか見ていた光を。



その度こうして立ち止まるのだろうか。
あの眩しさを、忘れられずにいるうちは。





そうして遠さを知るのだろうか。
決して届かない場所から。




















静かに目を伏せ、ゆっくりと歩き出す。




星空に近づくことも、遠ざかることもない。













星空の明るさを思い出し、そして彼の不在を思い知った。








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目に焼き付いた光の全てはただ遠くに


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