アンジッヒを知る
時々ね、本当に時々、ヒル魔くん見てると泣きたくなる。なんでかな。
喧嘩した後、とか?
ううん、喧嘩してもしなくても。遠くから眺めてたらなんとなく。あれ、どうしたんだろうって感じで。
変だよね、と笑うまも姉はいつもと変わらない。
それが少しだけ胸が痛い。
ねえ、まも姉、きっと恋だよきっと、まぎれもなく。
わけもなく泣きたくなる、私だって恋愛したことないから知ってるとは言えないけど、
それは恋だよ、恋なんだよまも姉。
喉まででかかった言葉をぐっと飲み込む。
あと一歩なんだ。
それを自覚しなきゃ始まらない。
まも姉が。
まも姉自身で。
口出ししちゃいけない。
それとわかるほどに二人の関係はすごく細い縒り糸でできている。
下手に触れれば断ち切れる。
紡ぐのは当事者以外の手では決してできない。
切れて終わるのか、それとも紡がれる日が来るのか。
境界線すら見えない。
もしかしたらそんなもの、ないのかもしれない。
まも姉にも、妖一兄にも。
振り向いて手を伸ばせば届くのかもしれない。お互いに。
だからこそあまりにも近くて、あまりにも遠いのだ。
近くて遠いこの距離が、縮まるその日は来るのだろうか。
いつかまも姉は知るのだろうか、泣きたくなるそのわけを。
涙を落としてそして気付くのだろうか。
気付いてないのは、もしかしたらまも姉だけじゃないのかもしれない。
まだ始まっていない、始まってすらいない。
まだ、まだ何にも。
早く、と思う。
早く早く、と。
早く気付いてこの細い縒り糸をたどってお互いに気付けばいい、自分の気持ちに気付けばいい。
もう春は過ぎ夏は行ってしまった。
早く早くと。
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秋が来て冬が来る
始まらないまま終わりを迎えてしまうその前に
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