器用な指先はガーゼを乗せた手の甲を、瞬くうちに包帯で巻き上げていく。
もう細い指先に冷たさを感じなくなっていた。
その体温に慣れてしまったのか、その指先に体温が馴染んだのか。
ほんの一瞬そんな考えが浮かんでいるうちに、指先は音もなく離れていった。

それを目で追うのも躊躇われ、椅子から立ち上がる。


「部活、頑張ってね」

そう笑う姉崎にああ、と頷く。
包帯を巻かれ、見慣れない手を軽く動かしてみる。 包帯は少しばかり大袈裟過ぎないかと危惧したが、きつくもなく緩くもない、それでいて邪魔にもならないように手当てされていた。 (完璧だな)
実戦で重宝するだろう手並みには、惜しいとさえ思わせられる。





「……部活は、真面目なのにね」



背後で片付けをしていた姉崎が小さくぽつりと、たぶん意識もしてなかったのだろう、そう呟いた。
振り返って見えた横顔が、それを物語っていた。



ああ、最初から、姉崎だけが。






「姉崎」



振り向いた姉崎に、真っ白な包帯を巻かれた手を掲げひらひらと振る。

「助かった、ありがとな」
「!うん、どういたしまして」



笑顔、だった。 先程の横顔の面影は微塵も感じさせない。
窓から入りこんだ夕方の涼やかな風に、茶色の髪が緩やかに靡いていた。
眩しさを、感じる前に踵を返した。



じゃあなと扉に手をかけるともう一度、部活頑張ってね、と背後から声が届いた。
ああと頷く代わりに再度手をひらひらと振った。

俺には不似合いな、白い手を。







西日の差し込む窓だった