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04 裏切ることも裏切られることも厭うくせに 一蹴するのは簡単だった。 てめえの欲しがるものは無い、少なくとも此処には。 それでも手を伸ばそうとする愚かしさなんざ、無駄に聡い頭で気づいていないはずもない。 つまりは全てを承知で、俺がそのやり口を気に入らない事も、また同時に結局は手に入らない事、口にするだけで惨めになるだけに過ぎない事も全て承知で手を伸ばしてくる。 不快さが先に立つよりも、この女の何がそうさせるのか、その一点が妙に頭にかかった。 馬鹿な女。 俺が見透かすことも承知で手を伸ばす。振り払われたら泣くのかよ。 一瞬この青い青い双眸が映す視界が揺らぐ様を見て見たいと思った、 ただ純粋に。 どんな形容詞をつけようが詩的概念で飾ろうが、水は水だ。 そしてそれを流すのは、何の事は無い、ただの生理的な現象でしかない。 どんなに言葉を飾ろうとだ。 そこに至る過程なんざにまるで興味は無い。 ただ純粋にこの瞳から流れ出る水を見てやりたかった。 それほどこの女の瞳は真摯だった。それでいてたやすく壊れそうな。 矛盾だらけだな糞女。 そう言ってやれば、この瞳は揺らぐのだろうか。 (裏切ることも裏切られることも厭うくせに) 05 少年を突き刺す、遠巻きな視線 「ばらすばらさないは既にてめえらの問題だ。隠したけりゃ隠してりゃいい」 「ヒル魔さ…、」 「だが馴れ合いなら認めねえ。この先馴れ合い続けりゃどうなるかなんざ、てめえにだってわかるだろ」 「……………」 「優先順位を勘違いすんな。大事なもんまで失くしたくねえならな」 いつかの言葉が耳に響いた。 あのとき僕がどういうつもりでそれを胸に仕舞いこんだのか、 あの人が、どういうつもりでそれを口にしたのか。 わからない、と言うにはもう、何もかもが。 「どうしたの、セナ。ほら早く行こ」 「うん…」 この手から自分から離れることを選んだのに、それでもこの手を求めてしまう。 「まもり姉ちゃん、…ごめん」 「え、なあに?」 僕はきっともう、まもり姉ちゃんが思うほど弱くない。 「?変なセナ」 それでも、この繋いだ手を離せないのは僕の弱さで。 (少年を突き刺す、遠巻きな視線)
傍で笑ってくれる、それが救いであると同時に 06 金網で隔てられたカフェテラス そんなことないよ。 確かにちょっとおそらくだいぶかなり普通ってものとは懸け離れているけど、あの人だって人間だよ。 血だって赤い。 私達と同じなんだよ。 そう言う筈だった唇は何故か言葉を飲み込んでしまった。 誰もが誤解している。 そう、今目の前で楽しそうにお喋りを交わす長年の友人たちでさえ。 けれど、私は飲み込んでしまった。 言う筈だった言葉を。 咲蘭とアコが楽しげに話す会話を聞きながら、紅茶の入ったティーカップを掻き混ぜる。 少しだけ落とした視線の先で、ミルクの白が螺旋を描いて紅茶に溶けていく。 まるで違う生き物みたいに思えたからだろうか。 例え血が赤くとも。 思考は平行線。 それなのに衝突。それゆえに衝突。 私とは、まるで違う生き物なんだ。 ミルクがすっかり混ざってしまった紅茶を前に、どこかぼんやりそう思っていた。 (金網で隔てられたカフェテラス) |